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2021.12.24 FRI

「人と人を繋ぐ、白い線。」

河野真弓

生活のために必死でバイトしていた学生時代、趣味もやりたいこともなかった。
スキルも経歴もない会社員時代に偶然出会った"誰でもできそう"なもの。
DIFFERENTLYのPOP UP SHOPでパネルを手がけて頂いた河野真弓さんに、
"誰にも真似できない"チョークアートについて伺った。

ふとしたことから出会った、チョークアート。

家族トラブルがあって、グレてたわけじゃないんですけど家出して、一人暮らしをするようになりました。家賃だけは出してもらいながら、それでも生活のためにバイト三昧で。高校は進学校だったので、みんなが大学に進学する中、ただ漠然と「広告とかいいな」ってグラフィックの専門学校に行ったんですけど、友達もいないし、バイトばかりでほとんど学校には行かないまま。でもとにかく「就職しなくっちゃ」と思ってエステの会社に入ったんですが、まぁブラックで。(笑)ノルマはきついし、お客さんに嘘をつきたくないと思って辞めて。それから歯科衛生士を目指しながら歯医者で働いたり、昔バイトしてた時の先輩が「Webデザインの会社を立ち上げるからこないか」って言われて、いざ入ったら会社がなくて私が登記の手続きを進めることになったり。経歴もスキルも大したものがなくて何しよっかなーって思ってたまま結婚することになって、結婚式の準備中にウェディングボードでチョークアートっていうのをたまたま見つけたんです。当時は街でもあまりチョークアートは見かけなくて、まだやってる人も少なかったし、誰でも出来そうだなぁ、誰でも出来るんだったら自分にも教えられるかなぁ、家で細々と教室開いたら子供のお世話しながらでもできるかなぁ、くらいの感覚で始めたんです。

チョークが繋いでくれるご縁。

それまで絵なんて趣味でもほとんど描いてなくて、今でも得意とも思ってないんです。好きな人に比べたら情熱も負けるし、なんで急に思いついたかわからないんですけど、人に教えようと思った以上、自分も出来てないと教えられないので民間のお教室に通ったあとは独学で学びました。製作の方は最初は元々そんなにやりたくなかったんですけど、やっているうちにクライアントがまた違うクライアントを紹介してくれるようになって。制作が楽しいっていうよりは、人と会うのが楽しいですね。わたしにはビジネスセンスはないんですけど、そういう知り合った方たちを紹介していくのは楽しいですね。自分を介した人同士がビジネスをしてるのって本当に嬉しいし、楽しい。チョークで出来ることは限られてるんですけど、人と人を繋げていくきっかけをチョークが作ってくれている、だから楽しくやっているというのもあります。

仕事の幅を広げてくれた、ターニングポイント。

仕事のターニングポイントは2つあって、1つ目は白墨を使い始めたこと、そして2つ目が似顔絵を描き始めたことです。そこからすごく仕事が広がっていきました。というのも、もともとチョークアートはオイルパステル、いわゆるクレヨンを用いるものが多いんです。そうすると油分が入ってるのでコートもできるし、発色もきれいに仕上がるので、それが看板としてのチョークアートの発祥だと言われていて。逆に白墨、学校のチョークだけで仕事が出来ている人っていうのはひと握りですね。絵が上手い人は多いのですが仕事に出来るかというとそうでもなかったりするので。白墨は描きっぱなしのお仕事が多いので、コートしない場合が多いんですけど、そうするとパフォーマンスとしてやるか、書き直し前提でやるか。それなりに実績がないと仕事の幅を広げていくのが難しいんです。また、似顔絵を描き始めたことで依頼されたのが、パフォーマンスとして今までで一番大きいお仕事でもあるんですが、櫻井翔さん主演ドラマの宣伝ビジュアルをライブペイントして欲しいという依頼ですね。近くで人に見られているっている緊張感よりも、貧乏性なので場所代とか警備員さんの時給とか、これだけの数の人が動いていて、失敗出来ないっていうプレッシャーのほうが大きかったですね。でもそういう大きなお仕事を頂くと信頼になりますよね。テレビとかも出たいわけじゃないんですけど、出ることによって、私に仕事をくれた方、過去の方も今の方も、喜んでくれるんで。そういう意味では色々やってよかったなって思いますね。

今回のパネルデザインについて。

今回描かせていただいたパネルデザインのイメージは、DIFFELENTRYのメッセージ「EXPAND YOUR HORIZONS, DISCOVER THE NEW YOU.」のイメージ通り、視野を広げてよく見てほしい、世界から厳選した良いものを届けている。という感じですかね。こうやって何か新しいものを作り上げるときって、自分自身の「喜んでもらいたい」という気持ちを大事にしています。仕事って喜んでもらえるかどうかだと思うんです。何かしてあげて、それがただ「ありがとう」ってお金で返ってくるだけ。最近は「お金くれたらこれだけやります」みたいに、それに見合う何かっていう逆の発想の人がすごく多い気がしています。

ただ、目の前の人に喜んでもらいたい。

将来あれしたい、これしたいってあまりないんですけど、ただただ目の前の人に喜んでもらいたいなっていう気持ちを繰り返していくだけだと思っています。不特定多数の人の為に頑張れないんですよ。不特定多数の人に好かれようと思うと、誰に対して頑張ればいいかわからなくなっちゃうんですよね。だから、お仕事の大小に関わらず、まずはそのお仕事をくださった方に喜んでもらいたい。あとは、なるべく自分を追い込むようにしてます。今までは運よくお仕事をもらえてましたけど全部本当に周りの方に恵まれて色んな方にお世話になっているだけで、自分の実力だとは思っていないので、来年はどうなってるかわからない。仕事なくなっちゃった、明日からどうしようって不安になるときは人に会うとか、全然関係ないような仕事でもいいからするとか、なるべく予定を埋めるようにしてます。マイナスのことを考えちゃうときって大体暇なんですよ。そういう時は余計なことを考えないように自分を追い込むようにしてます。

河野真弓Kawano Mayumi

2009年よりチョークアートを始める 日本とオーストラリアでチョークアートを学び、
白墨を使った黒板アートは 独学にて試行錯誤を重ね、現在に至る。
看板、広告、イベントなどの仕事の他、TV・雑誌などのメディアにも多数出演。

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